オリジナルTシャツで使用するTシャツの生地「綿花から糸にする」「糸を編み立てて生地にする」「生地を染色する」の工程にも様々な国の生産者のこだわりと努力が詰まっています。詳しく教えてくれています。

Tシャツづくりは原料から。生地に使われている綿の産地と特徴とは?
目次
Tシャツは綿を材料とした糸を編み込んだ生地から出来上がりますので、綿の品質がTシャツの品質に大きく影響を与えます。
綿の原料となる綿花は海外で栽培されますが、低価格で高品質なTシャツを作るためには、綿花がどこで栽培されたのかということが非常に重要です。産地別の綿花の特徴や、Tシャツにはどのような綿花が使われているのかというお話しからスタート。
綿花の産地によって個性もさまざま
同じ食材でも産地によって味が異なるように、綿花も産地によって風合いや肌ざわりなどの品質が異なります。

綿花は育つ土地の気候や水、風土あるいは収穫方法によって性質が全く異なり、ひいては綿の品質を大きく左右するのです。具体的には
- グレード(色合いや不純物の多さ、カビの有無、害虫の影響)
- ステーブル(繊維の長さ)
- キャラクター(成熟度、強度、均整度)
という3つの要素で綿の品質が決まりますが、綿花の産地によってさまざまな個性が出ます。
生産地別の綿花の特徴
主に中国やインド、アメリカ、パキスタン、オーストラリアなどが綿花の産地国として知られています。
どの国の綿花に、どんな特徴があるのかを見ていきましょう。
中国

世界の工場として知られている中国は、綿花の生産量も世界一。2011年度は生産量が718万トン、世界シェアは27%です。主に黄河流域、揚子江流域、遼河流域、新疆ウイグル自治区で在倍されており、特に新疆ウイグル自治区で栽培される綿花は繊維長が長く、世界三大高級コットン「新疆長繊維綿(しんきょうちょうせんいめん)」として知られています。
「手摘み」という人海戦術で人が綿花を収穫する方法が採用されているのも中国の特徴。人件費が安いため、綿も安く作れるのです。
ただ、麻の袋に詰めて出荷されるため、夾雑物(きょうざつぶつ)(麻袋の繊維片や落ち葉などのゴミ)などが入りやすく、夾雑物を取り除く「混打綿(こんだめん)」という工程は欠かせません。
インド

モンスーンなど気候の変動でかつては綿花の収穫量が不安定だったインドですが、遺伝子組換え技術を導入して綿花の増産に成功。今やアメリカを追い越して世界2位、近年では世界トップシェアの中国に迫る勢いで生産量を伸ばしています。ふとん綿用や脱脂綿用、繊維長が長い高級綿用の綿花など、ありとあらゆる綿花が栽培されています。インドにおいても綿花の収穫は手摘みで行われますので、比較的コストを低く綿を作ることができます。
アメリカ

中国、インドに次いで綿花の生産量が多いのがアメリカ。世界シェアの13%を誇っていています。アメリカで生産される綿花で作った綿は中国綿に比べて油分が少なく、シャリ感(乾いた肌ざわりで硬めの質感)が出るため、「米綿(べいめん)」と呼ばれていて、Tシャツ愛好家の中でも人気が高い綿です。アメリカでは綿花は農作物の中でも特に重要視されていて、綿花生産国輸出量の30%のシェアを誇っています。そのため、国策として農家の保護や輸出維持拡大などを行い、綿輸出大国の地位を維持しています。
アメリカでは中国やインドなどと異なり、綿花を収穫機で収穫する「機械摘み」が主流となっています。人件費が高いため、人の手で綿花を収穫するよりも、機械で収穫したほうが低コスト、高効率なのが理由です。また、手摘みのように麻の収穫袋を使わないため、夾雑物が入りにくいというメリットもあります。特に繊維長が長い「スーピマ綿」は世界三大高級コットンの1つとして有名です。
パキスタン
主に布団綿用に使われる綿花の栽培が行われており、他にもネル、キャンバス、脱脂綿などに使用される綿花も多く生産しています。
70年代にはアメリカで安価なパキスタン産の綿で作られたTシャツが多く流通し、古着愛好家の中では「パキ綿」という愛称で知られています。
オーストラリア
多くの綿花産地国は北半球にありますが、オーストラリアは南半球にあるため、北半球では春にあたる時期に綿花が収穫されます。
他の綿花生産国が端境期のときに輸出できる点が大きなアドバンテージです。生産、管理、流通など品質面が安定していて、市場価格は米綿よりも高値がつく傾向があります。アメリカの綿花と同様、機械摘みで収穫が行われているので、夾雑物が混ざりにくいのに加え、粘着性が低く繊維長も長いため、質感が良くきれいな生地が作れます。
Tシャツに使われる綿はどこの国のものが多い?
同じ綿花という材料でも、国によって個性やあることがおわかりいただけたかと思います。
それではみなさんが普段着ているTシャツにはどこの綿が一番使われているでしょうか?
その答えは中国です。綿花自体のコストも低いのに加え、地政学的な理由も背景にあります。
Tシャツを製造する工場は中国や東南アジアに多いので、中国産の綿花を使えば輸送コストも削減でき、みなさんもリーズナブルな値段でTシャツを買えるというわけです。
特に中国国内でも、沿岸部で栽培された綿花をよく使います。中国綿のデメリットとして、手摘みで収穫を行うため、夾雑物が入りやすいということを先程ご説明しましたが、だからといって中国の綿の品質が悪いわけではありません。

綿花は麻袋にギュッと圧縮されて原綿として工場に入荷されます。その後、高温多湿の部屋で一晩寝かす「開俵(かいひょう)」、原綿を解きほぐす「混打綿」という工程を経て、原綿から糸を作る工程に入っていくのですが、混打綿の段階で夾雑物もきれいに取り除かれます。
ときには1mm以下の細かい夾雑物が混ざってしまうこともありますが、染色の際に上の画像のように、染料が染まらない「飛び込み」という目で見える形でわかります。そのため、夾雑物が混ざった生地は染色後のチェックで取り除かれ、みなさんの手元には高品質なTシャツのみをお届けできるというわけです。
一方で、Tシャツの品質向上のために米綿やオーストラリア綿を使うこともあります。
例えば米綿はシャリ感が出るということを先程ご説明しました。そもそもTシャツはアメリカで発展しました。もともと海軍で下着として使われてきて、第二次世界大戦後にジーンズとともに労働者の中で広まり、やがてファッションアイテムとして普及してきたという歴史があります。
「Tシャツ=米綿」ということで、現在でも米綿にこだわるTシャツ愛好家も少なくありません。
米綿を使ったシャリ感がある本来のTシャツを作るために、コストが高くなっても米綿を使うケースがあります。

また、特に白いTシャツは小さな夾雑物が目立ちやすいという特徴があります。そのため、美しい純白を表現したい場合には、機械摘みで夾雑物が混入しにくく、尚且つ繊維長が長くて生地の表面がきれいに見えるオーストラリア綿を使用することもあります。コスト面だけでなく、Tシャツの特性を考慮しながら、綿を選ぶということもTシャツ作りにおいては非常に重要なのです。
同じ綿花でも、国によって特徴が異なるなんて面白いですよね。Tシャツを着る際には、白い綿花が咲き乱れる異国の綿畑に思いをはせてみるのも良いかもしれませんね。
良いTシャツは良い綿花選びから。それぞれの特徴や相場、地政学的な条件に至るまで事細かに把握し、コストや品質に合わせてどこの綿を使うかという所までこだわってTシャツを作っています。普段なかなか意識しないことだと思いますが、目に見えない労力が1枚のTシャツに詰まっているのです。
Tシャツの生地に使われている糸にはどんな種類があるの?
Tシャツの厚みや重みを左右するのが糸。原料である綿花から紡績された糸を編み立てることによって、Tシャツの生地ができあがります。
太い糸を使えば硬めで重たい質感のTシャツを作ることができるけれど、細い糸を使えばやわらかくて軽いTシャツを作ることができるというように、使う糸によって着心地や生地の質感、重さが変わってきます。
今回はTシャツにどの様な糸が使われているのか、糸の種類によってどのように着心地や生地の質感が変わるのかという特徴についてご紹介します。
糸の品質を決める糸番手とは?
まず、糸には「番手(ばんて)」という数値が決められています。一定の重さに対して長さがいくらあるか、具体的には1ポンドあたりの長さで決まり、数値が大きければ大きいほど、糸が細くて軽量になるというのが特徴です。
糸を作るには、付着した不純物(葉っぱやゴミ)を取り除く「混打綿(こんだめん)」ののち、もつれあった繊維を解きほぐして1本1本の繊維にして、表面の不要な繊維を取り除く「カード工程・梳綿(そめん)」、上質な糸を作る場合はさらに不要な繊維を取り除いて糸の表面をきれいにする「コーミング」という工程を経て、糸ができあがる紡績工程に移ります。
糸の太さはカード工程やコーミングで、表面の不要な繊維をどれだけ削るかということが大きく関係しているのです。
番手には大きく分けて「太番手」「中番手」「細番手」という3種類があります。
それぞれに使用される綿の繊維長は一般的に太番手が20~27mm、中番手が26~28mm、細番手が28~33mmで、名前のとおり太番手が一番太い糸となります。
ちなみに20mm以下の糸は太すぎて繊維として使用できないとされていて、縫い糸などの用途に使われます。
太番手の糸を生地に使うと重くて分厚い生地がしっかりしたTシャツが作れ、細番手の糸を生地に使うと軽くて風通しが良いTシャツが作れるというわけです。
具体的に糸のお話に入る前に、糸にはこうした太さがさまざまあることを念頭に置いていただけるとわかりやすいかと思います。
Tシャツの生地に使われる糸には大きく分けて「カード糸」、「コーマ糸」、「セミコーマ糸」の3つの種類がありますので、ここからはそれぞれの種類の糸の特徴をご紹介します。
最もスタンダード。涼感があり硬めの質感:カード糸

まずはTシャツに最も使われている「カード糸」です。比較的太めの糸で、中番手もしくは太番手の糸となるのが特徴です。
糸をつくる過程で、余分な繊維を取り除く「カーディング」という工程を行っているので、「カード糸」と呼ばれます。
カーディングでは一般的には5%ほどの短い繊維を取り除いています。
また、1本の糸をそのまま編む「単糸(たんし)」で使われることが多いです。
光沢はあまりなく、毛羽(けば)が多めなのが特徴ですが、安価に作ることができるため、Tシャツの価格自体も安く抑えることが可能です。
コーマ糸で作られる生地よりも、サラッとしていて、硬めです。このような質感を「シャリ感」と呼ぶこともあります。
ランクとしては後述するコーマ糸のほうが上となりますが、だからといってカード糸の質が悪いわけではありません。また、カード糸で作られる質感にこだわるTシャツ愛好家も多いです。
高品質。光沢がありやわらかな風合い:コーマ糸

カード糸よりも繊維の均一性をあげるために、表面の不要な繊維をさらに削ぎ落とす「コーミング」という工程を施した糸が「コーマ糸」です。
カード糸でも「カーディング」という工程により5%ほどの繊維が取り除かれることは先程ご説明しましたが、コーマ糸では15~20%ほどの繊維が取り除かれます。削ぎ落とす繊維の量が多いため、同じ量の綿花を使っていてもカード糸と比べるとコーマ糸の方が出来上がる糸の量が少なく、カード糸を100とすると、コーマ糸は70ほどになります。
ニンジンの皮を丁寧に剥くと、表面はきれいになるけど、食べられるニンジンの量は少なくなるようなイメージです。
カード糸と比べると製造工程も多く、ランクが上に位置づけされます。短い繊維をさらに取り除くことで毛羽立ちが減り、ツヤのある、やわらかな高品質Tシャツに仕上がります
また、洗濯をしても生地表面に毛羽が出にくく、生地表面の美しさが長持ちします。
日本と中国独自の規格、セミコーマ糸
糸が比較的太めで安価、毛羽が多いのでラフな風合いと硬めの質感が特徴の「カード糸」、比較的細い糸で高価、毛羽が少ないので光沢があり、やわらかな風合いが特徴の「コーマ糸」。この2種類が国際的な糸の区分です。

しかし、カード糸とコーマ糸の中間ランクである「セミコーマ糸」というランクが存在します。
このセミコーマ糸という概念は日本と中国にしかなく、他の国の工場では「セミコーマ糸を作って」と言っても通じません。
セミコーマの作り方はいくつかありますが、その内の一つはカーディングという工程を行う方法です。
カード糸やコーマ糸の作り方と同様ですが、その後のコーミング工程で表面の不要な繊維を削ぎ落とす量が、コーマ糸が15~20%ほどの繊維が取り除かれるのに対して、セミコーマ糸は10%ほどの繊維が取り除かれます。
そのため、コーマ糸と比較すると綿花から出来上がる糸の量が増えて比較的安価に作れ、カード糸よりも毛羽や糸ムラが少ない光沢がある糸が作れるのが特徴です。
いわば、カード糸とコーマ糸の良いとこ取りをした糸と言えるでしょう。また、セミコーマ糸の中でも、コーミング工程で繊維を削る量を調整することで、安価だけど毛羽が少なくて質感が良い「カード糸に近いセミコーマ糸」、「コーマ糸に近いカード糸」というように、微妙な調整を行うことも可能です。
セミコーマ糸という概念があるからこそ、日本や中国で着心地が良くて安価なTシャツが作れると言えます。
糸の品質がTシャツの品質を決める
以上のように、Tシャツの価格や特徴を決めるためには糸の種類が非常に重要です。まとめると、糸の表面の不要な繊維をどれだけ削るかによって、糸の種類が異なります。
価格を抑えた一般的なTシャツを作りたい時は、不要な繊維をあまり取り除かないカード糸、少々値段が高くなっても風合いがよい高品質なTシャツが作りたい時は、不要な繊維を多めに削るコーマ糸、という使い分けができます。さらに、セミコーマ糸を使うことで、価格と着心地で微妙なバランスを調整することが可能です。
普段、Tシャツを着ている分には「これはカード糸でできている」「このTシャツはセミコーマ糸だ」というように意識することはあまりなく、詳しくないと見た目や着心地だけでカード糸なのか、セミコーマ糸なのかを区別することも難しいです。
しかし、どんな糸を使うかによって値段や着心地が変わるため、Tシャツの作り手は微妙な糸の違いにもこだわっています。ぜひ、Tシャツを着られる際には、こうした目に見えないこだわりがあることも感じていただければ幸いです。
Tシャツの色合いやデザインを左右する染色工程とは?
Tシャツのデザインに大きく関わる工程が「染色」です。
その名の通り、Tシャツの生地に色を染める工程ですが、ひとことで染色と言ってもさまざまな手法があります。今回は染色の方法を詳しく解説し、その奥深さを見ていきましょう。
染色工程の流れ
まずは綿の染色に一般的に用いられる反応染料を使用した液流染色機(えきりゅうせんしょくき)を用いた染色がどのように行われているのか、大まかな流れをご紹介します。(※丸胴商品の染色の説明となります。)
染色工場に運ばれた生地は、染色釜の能力に合わせて規定の重量ごとにまとめ、反物を繋ぎ合わせます。

同時に精練漂白などの前処理の準備や染色溶液を作るために、染料や助剤の準備も進められます。
染める色や生地に合わせて染料や、染料の固着を助ける浸透剤、染色溶液の性質を調整する苛性ソーダなどを調合し、染色溶液を作るのです。
生地の準備と前処理の助剤や染色溶液の準備が整ったら、いよいよ染色作業に入ります。
染色釜に生地を投入し、前処理工程の後に染料を生地に固着させます。生地が染まったら釜の中で染液を取り除く洗浄工程を経て生地を釜から取り出します。次は「脱水」と「乾燥」です。
前行程で残った水分を「脱水」で取り除いてから、生地の形を簡易的に整える「簡易幅出し」を行った上で乾燥させます。

その後、生地の形を整える「定形(ていけい)」という工程を経て、生地の品質を確認する「検反(けんたん)」を行い、染色は完了です。
染色工程はもちろん、脱水や乾燥といった工程がしっかり行われていないと色ムラや乾燥ムラなどの品質事故につながるので、前後の工程も入念に行います。
染色工程が終わったら、やっと生地をTシャツに形作る「縫製(ほうせい)」という工程に移るのです。
染色が行われるタイミング
以上が生地を染色する際の大まかな流れですが、染色を行うタイミングは製品や会社によってさまざま。ここからは4つの染色タイミングとその特徴を見てみましょう。
綿を染色する綿染め(トップ染め)
原綿の状態で染色します。色の堅牢度が高く、染色の中でもランクが高い手法で、2色以上の糸を撚り合わせた杢製品を作るときなどに採用される染色方法です。
また、異なる色に染め分けた綿を混合すると霜降りのような色合いになるため、デザイン性にも優れています。
糸を作る前段階で行われる梳毛(そもう)前紡(ぜんぼう)工程の綿を「トップ」と呼び、このタイミングで染色するために「トップ染め」とも言われます。
糸染め

綿から糸に加工した後に染色する方法です。
H型やX型の「かせ」という道具に巻かれた状態の糸を染色する「かせ染め」を使った方法と、チーズのような形に巻き上げた状態の糸を染色する「チーズ染め」の2種類があります。
かぜ染めは風合いが良くてムラも少なく、主にウールやアクリルなどの太番手の糸に使われる手法です。
チーズ染めは加工コストがかぜ染めに比べて安く、主に綿やポリエステルなどの糸に向いています。近年では、高品質ですが時間と手間がかかるかせ染めを行っている工場は少なくなってきており、チーズ染めが主流となっています。

生地染め
最も一般的な染色方法と言えます。編み立された状態の生地に染色液を浸す、あるいはパディング(塗ること)して染料を固着させます。
液流染色機という機械を使い、生地と染色液を同一方向に流しながら染色を行います。布帛(ふはく:織物のこと)も丸編み(ニット生地)も一般的にはこの方法で染色します。

製品染め
生地を縫製して製品になった段階で染色する方法です。
ワッシャーと呼ばれる、工業用の洗濯機を活用して生地に染料を固着させます。ワッシャーはムラ染めや絞り染めなどが可能で、ジーンズの洗いや風合い出しなどにも使われる機械です。

Tシャツの染色方法の種類
特にTシャツで主流の生地染めには、「浸染(しんぜん)」と「連続染色(連染・れんせん)」の2つの方法に分けられます。
浸染とは生地を染色溶液に一定時間浸して染色を行う方法です。温度を調整しながら、時間をかけてゆっくりと生地に色を固着させます。
一方、連染は染料や薬剤と糊を混ぜ合わせた染料液に生地をパディングさせた後、蒸して乾燥することで発色させる方法です。
浸染は染料液の固着率が高く、品質が高いというメリットがある一方で、温度管理が必要で時間もかかるというデメリットもあります。
連染は浸染と比較すると染料液の固着率は7割程度と劣りますが、時間がかからないため大量生産に向いていて、コストも安いというメリットがあります。
一般的に丸編み生地の染色は浸染で行われることが多く、複数の機械で同時に染色作業を進めます。
染料や温度の工夫
生地の繊維によって使う染料もさまざま。みなさんも学生時代の理科の授業で「酸性」「アルカリ性」という性質を習ったかと思いますが、染色にはこの性質が大きく関わってくるのです。
Tシャツの生地の繊維は、アルカリ性で染まりやすいものと、酸性で染まりやすいものに分けられます。
例えば綿やレーヨン、麻、特定外繊維はPH値が10~11のアルカリ性染料が染まりやすいという性質があります。アクリルやナイロン、ウール、ポリエステルなどはPH値が4~5の酸性の染料が染まりやすいです。
基本的に1回の染色で色が染まりますが、複合繊維の場合は2回、3回と染色することも珍しくありません。
例えば、T/C生地はまずポリエステルを酸性の染料で染色し、その後綿をアルカリ性の染料で染色します。
先程もご説明したように、薬剤によって染料液の性質を調整することが可能です。
例えば苛性ソーダはアルカリ性の性質があるので、綿やレーヨンなどを染色する場合には染料と苛性ソーダを混ぜ合わせます。
また、温度管理も非常に重要です。アルカリ性で染まる繊維は60~80℃と比較的低温で、酸性で染まる繊維は100℃、ポリエステルは130℃という高温で染色する必要があります。
使う繊維や組み合わせによって染料や染色工程の順番を工夫することがポイント。染色時間の短縮やコストダウンに大きく関わります。
染色堅牢度を向上させるための取り組み

Tシャツを着続けることで汗や水分、あるいは日光などのダメージを受け、繰り返し洗濯することで色あせが発生します。
そこで、染料が落ちにくい「染色堅牢度」を向上させることが、大きな課題です。さまざまな試験を行い、より染色堅牢度が高い染色方法や染料を常に模索しています。
紫外線の影響でどれだけ色あせが発生するのかを測定する「紫外線カーボンアーク灯式耐光性試験機」、洗剤やドライクリーニング、汗や水などがどれだけ色に影響を及ぼすのかを測定する「ラウンダーメーター」、摩擦によって発生する色移りの度合いを調べる「学振型 摩擦試験機」などを使います。最近のTシャツは色あせや色移りがしにくいのは、常にこうした実験を地道に繰り返して、染色技術を改善しているからなのですね。
染色がTシャツのデザインの質を決める!
Tシャツの生地の特性や表現したいデザインによって染色方法や染料、温度など、さまざまな要素を工夫する必要がなされていることがおわかりいただけたかと思います。
また、「より長持ちする」「色移りなどのドラブルを防ぐ」ために、常にトライアンドエラーが繰り返されています。
色合いもTシャツの大切な要素だからこそ、妥協を一切せずに丁寧に行われているのです。